いつも不満を言いながら会社に居続けている先輩。やる気もなさそうで成果も出していないのに、なぜか辞めない。
そんな姿を見て「自分もああなるのかな」とゾッとしたことはありませんか?
「転職しない人は無能」という声もちらほら聞こえる中で、今の会社にとどまる選択は正しいのかどうか。
この記事では、転職しない人がそう見られてしまう背景や実際の傾向について、冷静に掘り下げていきます。
転職しない、したことない人の割合
リクルートの調査(2022年)によると、正社員・正職員として働く20〜59歳のうち、転職経験がない人の割合は約5割(48.8%)という結果が出ています。特に20代では62.6%が未経験者とされており、まだ転職を経験していない人が多数派です。
一方、30代以降になると転職経験者の割合が増え、40代では約6割が転職済みという状況。未経験者の比率は40代で40.1%、50代では42.0%と一定数存在していますが、20代と比べると減少しています。
このデータからも、社会人経験が長くなるほど転職を経験する人が多くなる傾向がうかがえます。つまり「1度も転職しないまま」という人は年齢が上がるにつれて少数派になっていくのです。
参照:「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」|株式会社リクルート

転職しない人が無能と言われる理由
周囲が次々と転職していく中で、ずっと会社に残っている人を見て「どうして辞めないんだろう?」と感じたことはありませんか。
働きぶりに目立った成果がなく、会社の文句ばかり言っている人であれば、なおさらそう思うはずです。そして時に、「あの人って無能なんじゃないか」と感じる瞬間すらあるかもしれません。
ここでは、転職しない人がなぜそう見られがちなのか、よくある3つの理由を見ていきます。
主体性がなく、会社にしがみついているように見えるから
たとえば、評価されていないのに何年も同じ部署に居続けている人がいたとします。何も変わらない環境に身を置きながら、特に行動を起こす様子もない。そんな姿を見ると、「自分でキャリアを動かせない人なのかな」と映ってしまうことがあります。
そう感じる人からすれば、「そこまで不満があるなら辞めればいいのに」と思うものです。
一方で、家庭の事情、経済的な不安、今以上の環境が見つかるとは限らないという気持ちなど本人には辞めない理由があるのも事実です。
チャレンジしない=成長していないと思われるから
何年も同じ仕事をこなしている人を見ると、「変化を避けている」「挑戦していない」と感じることがあります。特に今の時代は、スキルアップやキャリアの広がりが重視されやすく、動かない人は止まっている人とみなされがちです。
ただし、すべての挑戦が転職というわけではありません。社内で任された役割をこなし続ける中で自分なりに学びや工夫を積み重ねている人もいます。
その努力が表に出にくいだけで、決して何もしていないとは限らないのです。
長い期間、同じような仕事しかしていないから
ずっと同じ業務を担当している人には、「応用が利かなそう」「考え方が固まっていそう」といった印象がつきやすいです。複数の会社を経験した人ほど、「あの人は1つの世界しか知らない」と感じることもあるでしょう。
とはいえ、社内にいながらも職域を広げたり、後輩の指導を任されたりと、状況が少しずつ変わっている場合もあります。表面的に「ずっと同じ仕事」と見えても、中身までまったく変わっていないとは言い切れません。
転職しない人でなく、転職できない人が無能?
「転職しない=無能」という見方には、もう1つの側面があります。それは、本当は転職したいのに、できずにとどまっている人が「無能」とみなされてしまうケースです。
「現職に不満があっても、転職先で通用する自信がない。変化に対する不安や、今の生活を壊したくないという気持ちが先に立ち、結局何もしないまま時間だけが過ぎていく。」
その様子を見た周囲は、「行動力がない」「状況を変える気がない」と感じてしまうことがあります。
たとえ能力があっても、外からは挑戦しない人に見えてしまう。そのギャップが、「転職できない人=無能」という評価を生んでしまうのです。
転職しない人はなぜ辞めないのか
次に気になるのは、転職しない人はどのような理由からその選択をしているのか、という点です。
リクルートワークス研究所が実施した全国就業実態パネル調査によると、転職希望を持ちながらも活動していない人の割合は30.2%。その理由としてもっとも多かったのは「今のところ転職しなくても問題がない」でした。
また、「転職活動中だが転職していない人」を対象にした別の調査では、転職していない理由として「自分に合った仕事がわからない」が14.2%を占めており、思うように動けていない現状も浮き彫りになっています。
その他、全世代で転職していない理由として多かったものは以下のとおりです。
- 自分にあった仕事がわからない
- 賃金・給料が希望にあわない
- 求人の年齢と自分の年齢があわない
- 希望する種類・内容の仕事がない
- 現職の会社に引き止められている
こうしたデータから見えてくるのは、「辞めない」のではなく「辞められない」人の存在です。
ここからは、転職に踏み出せない理由を、実際によくある状況を交えながら具体的に見ていきます。
参考:なぜ転職したいのに転職しないのか|全国就業実態パネル調査
辞めるほどの不満はないから
転職しない理由としてまず多いのが、「そこまで困っていないから」というものです。
先述の調査でも、「今のところ転職しなくても問題がない」と答えた人がもっとも多く、これは裏を返せば「大きな不満がないから動かない」ということでもあります。
仕事に強いやりがいや成長を求めていない人もいれば、「まあまあの人間関係」「それなりの給与」「慣れた仕事内容」に満足している人もいます。
今の環境に強いストレスがなければ、わざわざ転職というリスクを取らないのは自然な判断といえるでしょう。
新しい環境に行くのが不安だから
転職という選択肢があってもすぐに行動に移せない理由の1つが、「変化への不安」です。
特に多いのは、「今より悪くなるかもしれない」という懸念です。職場の雰囲気、上司・同僚との相性、業務内容、通勤時間など、転職先には未知の要素がつきもの。現在の職場に不満があっても、「このままのほうがマシでは……」と考えてしまう人は少なくありません。
調査結果でも、「現職の会社に引き止められている」「選考に通らない」「家族に反対されている」など、外的な要因以上に、「思い切れない内面の迷い」が行動を止めているケースが多く見られます。
転職しても状況が良くなるとは限らないと思っているから
「転職したら、今より良くなる」と思えない限り、人はなかなか動けません。
実際、リクルートの調査でも「希望する種類・内容の仕事がない」「求人の年齢と自分の年齢が合わない」など、そもそも選択肢が限られていると感じている人が一定数います。
また、「どんな仕事が自分に向いているかわからない」と答えた人も全体の14.2%にのぼります。やみくもに転職しても、自分に合わない環境に入ってしまえば、むしろ状況が悪化するかもしれないという不安は根強くあります。
「理想が見えない、条件が合わない、変化が怖い。」そんな要素が重なり、辞めたくても辞めない状態が続いてしまうのです。

転職しない人の特徴
転職を選ばない人には、どんな共通点があるのでしょうか。ここでは、転職しない人によく見られる3つの特徴を紹介します。
安定志向が強い人
まず目立つのは、生活やキャリアにおいて「安定」を最優先するタイプです。
新しい環境への挑戦よりも、今の職場で得られる安心感を重視します。たとえ多少の不満があっても、「毎月の給与が入る」「仕事内容が予測できる」といった現状の安定を手放すリスクは取りたくないという考え方です。
このタイプは、変化よりも継続に価値を感じやすく、「今のままで問題ない」と納得している限り、自ら行動を起こすことは少ない傾向があります。

他人と比較しない人
周囲が転職しても、自分は自分というマイペースさを持っている人もいます。
SNSで転職の成功例が流れてきたり、同僚が次の会社での年収アップを報告していたとしても、流されることなく「自分にとって居心地がいいかどうか」を基準に判断します。
こうした人は、世間的な評価よりも自分の感覚を信じる傾向があり、他人の動きに左右されず、落ち着いて現職にとどまる選択をします。
社内に信頼関係や実績がある人
長く同じ会社で働くことで、信頼を積み上げてきた人も多くいます。
上司や同僚との関係が良好で、社内での立場や評価が確立されていると、「外に出てゼロからやり直すより、ここでやっていこう」と考えるのも自然です。
また、自分の強みや働き方が社内に理解されている環境では、転職によってそれを失うリスクも感じやすく、あえて動かないという選択を取ることがあります。
優秀な人ほど転職するという意見について
職場で頼りにされていた人や、明らかに成果を出していた人が突然辞めていく。その一方で、なんとなく居続けている人、明らかにパフォーマンスが落ちているのに会社に残り続けている人もいる。
こうした状況を見ていると、「優秀な人ほど転職していく」という考え方に納得してしまう場面もあるのではないでしょうか。
ここでは、「できる人から辞めていく」と言われる背景と、転職できる人=すごい人なのか、という問いについて掘り下げていきます。
優秀な人ほど転職すると言われる理由
この意見には、それなりの根拠があります。
たとえば、評価されない、成長の余地がない、理不尽な上司がいる環境に長くとどまっても、得られるものは限られます。
優秀な人ほど、そうした状況を見極めるスピードが早く、見切りのつけ方も的確です。働く環境が自分の成長を妨げていると感じれば、早めに次のステージを選択するという判断になります。
また、転職を逃げではなく、前進と捉えている点も特徴的です。
今の会社でこれ以上の経験が望めないと感じれば、自分にとってより成長できる場所を選ぼうとする。その結果、周囲からは「できる人からいなくなる」と映るわけです。
残された側にとっては会社の課題が浮き彫りになる一方で、自分との違いを感じて焦りや劣等感を抱くこともあるかもしれません。

転職できる人はすごいのか
転職先でもすぐに結果を出していたり、前職では得られなかったやりがいを語っていたりする姿を目にすると、「やっぱりすごいな」と感じることもあるでしょう。特に、自分はまだ転職に踏み出せずにいる場合、その行動力や判断の速さがまぶしく見えることもあります。
とはいえ、一概に「転職できる=すごい」とはいえません。
転職すれば自動的に評価されるわけではなく、新たな環境にうまくなじめず、むしろ苦労している人も少なくありません。逆に、同じ会社で地道に成果を重ね、周囲からの信頼を築いている人にも、確かな実力があります。
転職の有無だけで人の価値が決まるわけではなく、自分のキャリアをどう捉え、どう活かしているかが問われているのです。
反対に転職する人が無能と言われるケースもある
必ずしも転職が前向きな選択とは限りません。中には「レベルの高い職場についていけなかった」「評価されずに居づらくなった」など、いわゆる逃げの転職と見られるケースもあります。
特に、短期間で何度も職を変えている場合や、成果を出す前に辞めてしまった場合には、「根気がない」「実力が足りなかったのでは」といった見方をされがちです。
転職そのものが無能の証明になるわけではありませんが、その理由やタイミングによっては、ネガティブに受け取られることもあるのです。

無能しか残らない会社の特徴
「優秀な人から辞めていく」という話の裏には、逆の現象もあります。
つまり、「優秀な人が居づらくなる環境がある」「その結果、無能と呼ばれてしまう人ばかりが残る」というパターンです。
ここでは、そうした人が育たず、出ていく会社に共通する特徴を紹介します。
成果より年功序列が重視されている会社
どれだけ結果を出しても評価されず、勤続年数や年齢だけが重視される環境では、若手や能力の高い人ほどやる気を失います。
上司より成果を出していても出世は望めず、結局「長くいる人が勝つ」という構造になっている会社では、実力を正当に評価されたい人ほど外に目を向けるようになり、結果的に動かない人だけが残る状況が生まれます。
挑戦や改善が歓迎されない会社
「前例がないからやめておこう」「余計なことはするな」といったような空気が支配している職場では、主体的に動こうとする人が浮いてしまいます。
現状維持こそが正解という雰囲気の中では、問題意識や向上心がむしろ煙たがられることも……。
そうなると、意欲のある人から順に見切りをつけ、挑戦しない人たちだけが残っていくことになります。
評価基準があいまい・不公平な会社
「がんばっても何が評価されるのかがわからない、上司の好みや社内の力関係で待遇が左右される。」
そんな不透明な評価制度では、納得感を持って働くのは難しくなります。
真面目に仕事に向き合っている人ほど、正当な評価を求めて別の環境を選びがちです。
一方で、理不尽な仕組みに順応してしまった人ほど、会社に居続ける傾向が強くなります。
【閑話】無能が生まれるピーターの法則とは
ここで少し視点を変えて、「なぜ無能な人が残るのか」を考える上でよく取り上げられる理論に触れておきます。
ピーターの法則とは、「人は能力の限界に達するまで昇進し続け、やがて無能なポジションに落ち着く」という組織論です。
つまり、出世するたびに求められる能力も変わり、最終的にはその人の力量を超える役職にたどり着いてしまう。そうして組織の中に機能しない人が残っていく、という構造を説明しています。
この理論は少し皮肉めいていますが、年功序列や形式的な昇進が続く企業には思い当たる節もあるかもしれません。
「優秀な人が辞める」「無能だけが残る」という現象には、こうした組織構造が関係していることもあるのです。
転職経験なしはリスク?
転職経験がないことは、状況によって強みにも弱みにもなります。
たとえば、1つの会社で長く働いた実績は「安定感」や「継続力」として評価されることがあります。社内での信頼関係や業務の深い理解も、転職経験者にはない武器になる場合があります。
一方で、「他社を知らない」「柔軟性に欠ける」と見られるリスクもあります。転職市場では、変化への適応力や多様な経験が重視される場面もあるため、選考で不利に働くことも否定できません。
要するに、転職経験の有無そのものよりも、それをどう活かしてきたかが重要だといえるでしょう。
転職の有無と有能無能の関連性は状況次第
転職をしたかどうかで、その人が有能か無能かを決めることはできません。
大切なのは、「どんな環境で、どう働いてきたか」です。転職しなくても成長している人もいれば、転職を繰り返しても実力を発揮できない人もいます。
とはいえ、「初めての転職」に不安を感じるのは当然です。期待していた職場と実際が違い、短期離職につながってしまうこともあります。転職には運の要素もあり慎重な見極めが欠かせません。
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