転職前のキャリアと、動機――まず、これまでのご経歴から。前職はWeb制作代理店のディレクターです。複数案件の進行管理、情報設計、品質管理、簡易な解析まで担当していました。嫌いな仕事ではありませんでしたが、受託の制約上、意思決定が外部にある点に限界も感じていました。自社サービスの改善に腰を据えて向き合いたい、というのが転職の動機でした。――応募先の求人で惹かれた点は。裁量のあるポジション、フレックスタイム、リモート可、モダンな開発体制。プロダクトのロードマップ策定やKPI設計にも関われる、と記載がありました。そこに期待しました。入社直後に気づいた齟齬――入社後、最初に違和感を覚えたことは。勤務形態がまず違いました。フレックスとありましたが、実態は全員同時刻出社で在宅は原則不可。ツールも最新版と聞いていましたが、プロジェクト管理はスプレッドシート中心、権限申請は紙、バージョン管理は共有サーバへの手動アップロードが慣習でした。――業務内容の齟齬は。配属はプロダクト企画と聞いていましたが、実際は既存ページの差し替え依頼を逐次処理する運用中心で、数値設計や仮説検証は担当外。意思決定の場にも同席できない運用でした。上長による不当な扱い――上長との関係で、具体的に不当だと感じた点は。評価の基準が共有されないまま、結果だけをその都度差し替えられたことです。たとえば、私が用意した改善提案に対して、理由の説明なく決裁の場で別案に置き換えられ、その後の会議で準備不足と断じられました。事前にレビュー依頼をしても返答がなく、会議中に初めて否定される、という流れが繰り返されました。――コミュニケーションの質については。業務上の指摘と人格への言及が混ざる場面がありました。論点を整理して返しても、議事録に反映されない。スケジュールが動的に変わるのは理解しますが、変更の記録を残さないまま責任だけは固定される。そうした扱いは不当だと判断しました。――勤務面の要求は。フレックスと謳いつつ可動時間は固定、休日も緊急対応の呼び出しが想定されていました。呼び出し自体は状況次第で必要ですが、運用ルールと説明がないまま常態化しているのは適切ではありません。短期離職の決断――退職を決めた時点の心境は。事実の確認と選択です。求人情報と実態の乖離、評価プロセスの不透明さ、是正の余地の小ささを総合して、ここでは成果が正当に積み上がらないと判断しました。1カ月未満の離職は履歴に残りますが、長期化してからの離職よりも、関係者にとってコストが小さいと考えました。――周囲の反応は。短期での判断を評価する声もありました。家族からは、根拠を示して説明できているなら問題ないと言われ、背中を押されました。次の転職活動と、今の職場――短期離職の説明はどのように。齟齬の事実、試した改善策、残っているリスク、判断基準を簡潔に共有しました。感情ではなく、情報と経緯で説明することを心がけました。――現在の会社を選んだ決め手は。プロダクトの意思決定プロセスが公開され、KPIの定義と変更履歴が閲覧できること、面接段階で職務記述書と日常業務のサンプルが提示されたことです。入社後のギャップが生まれにくい構造だと理解できました。――入社4年、リーダーとして大切にしていることは。採用や評価の言葉に整合性を持たせることです。求人票にはできるだけ運用ルールを明記し、意思決定のログを残す。指摘は行動に限定し、人格へ踏み込まない。当たり前のことを続けるだけで、ミスマッチは大幅に減らせます。同じ悩みを持つ人への助言――短期離職に迷う人へ。まず、齟齬を列挙して可視化する。次に、是正の仮説と必要な条件を書き出す。最後に、期限を決めて動く。残るなら条件を合意して記録に残す。満たせないなら撤退を選ぶ。これは逃避ではなく、リスク管理の一手です。編集後記(Zターンのすゝめ編集部)今回の事例は、感情で動かず、事実と手順で意思決定した好例だ。求人情報と実態の差分、評価プロセスの不透明さ、上長の不当な言動。どれも曖昧にすれば引き延ばされるが、記録し、提案し、期限を切れば前に進める。短期離職は履歴上の汚点ではない。合わない環境から理性的に撤退し、整合性のある職場で能力を発揮するための選択肢である。