今の会社を辞めたいけれど、辞めたあとの生活費が心配で踏み出せない……。
そんなときにネットで「退職給付金」という言葉を見かけて、少し期待してしまった方もいるかもしれません。
ただ、調べれば調べるほど情報が食い違い、「怪しいのでは?」と不安になることもありますよね。
この記事では退職給付金の正体と、失業手当との違いをはっきりさせながら、辞める前に知っておきたい注意点をまとめます。

今の会社を辞めたいけれど、辞めたあとの生活費が心配で踏み出せない……。
そんなときにネットで「退職給付金」という言葉を見かけて、少し期待してしまった方もいるかもしれません。
ただ、調べれば調べるほど情報が食い違い、「怪しいのでは?」と不安になることもありますよね。
この記事では退職給付金の正体と、失業手当との違いをはっきりさせながら、辞める前に知っておきたい注意点をまとめます。
結論からいうと、「退職給付金」というのは正式な制度名ではありません。
まずはこの言葉が何を指しているのか確認しておきましょう。
退職給付金という名称は、法律や行政の制度として定められているものではありません。
厚生労働省が実施している調査でも「退職給付制度」という表現は登場しますが、これは企業が従業員に支払う退職金や企業年金を指すものであり、退職後に国から支給されるお金とは別物です。

では、ネットで「退職給付金」と呼ばれているものは何なのでしょうか。
実際に調べてみると、その多くは雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)や、健康保険の傷病手当金を指して使われているケースが目立ちます。
つまり「退職給付金」とは特定の一つの制度ではなく、退職に関連して受け取れる複数の給付を総称した俗称と考えるのが実態に近いんです。
まずはこの言葉のあいまいさを理解しておきましょう。
「退職給付金と失業手当の違い」で検索する人が多いのも、この言葉のあいまいさが原因です。
実際には失業手当(雇用保険の基本手当)こそが、退職後の生活を支える代表的な公的給付です。基本手当は、雇用保険に加入していた人が離職し、働く意思と能力があるにもかかわらず職に就けない状態のときに支給されるものです。
一方で「退職給付金」という言葉には、こうした失業手当だけでなく、病気やけがで働けないときの傷病手当金や、退職時に会社から受け取る退職金までまとめて含まれてしまうことがあります。
制度ごとに支給元も条件も申請先も違うため、ひとくくりに「退職給付金」と呼んでしまうと、自分がどの制度を利用できるのか判断しづらくなってしまうんです。
前章で触れたとおり、「退職給付金」という名称の公的制度は存在しません。実際に退職後の生活を支えてくれるのは、雇用保険や健康保険に含まれる複数の給付制度です。
まずは代表的な4つの制度を、対象になる状況とあわせて表で見てみましょう。
制度名 | どんな状況で使えるか | 運営元 |
|---|---|---|
失業手当(雇用保険の基本手当) | 会社を辞めて次の仕事を探している間 | ハローワーク(雇用保険) |
傷病手当金 | 在職中に病気やケガで働けず休業した間 | 健康保険組合・協会けんぽ |
雇用保険の傷病手当 | 失業手当の申請後、病気やケガで働けなくなった間 | ハローワーク(雇用保険) |
再就職手当 | 失業手当の受給中に早期で再就職が決まったとき | ハローワーク(雇用保険) |
失業手当は、雇用保険に加入していた人が離職して求職活動をしている間に支給されるお金です。
自己都合退職の場合は、離職前2年間に12カ月以上の被保険者期間があることが受給の前提条件になります。
会社都合や特定の事情による離職なら6カ月以上でも対象になるケースがあり、この違いが「自己都合か会社都合か」で条件が変わる理由です。
受給できる期間は原則として離職日の翌日から1年間と決まっているため、退職後すぐに動き出すことが大切です。
出典:Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)|厚生労働省

受給条件を整理すると、次のようになります。
もらい方の流れは、
という段取りです。自己都合退職の場合はここに原則1カ月の給付制限がつきます。
傷病手当金は、在職中に病気やケガで働けなくなり、給与が支払われない期間の生活を支える健康保険の制度です。
退職を検討している人の中には、休職と退職のどちらを選ぶか悩んでいる方もいると思いますが、これは失業手当とは別の制度で、あくまで「在職中の休業」に対する給付である点を押さえておきましょう。
受給には、次の条件をすべて満たす必要があります。
自分での申請は以下の流れで進みます。
会社を通さずに自分で提出することも可能なので、退職後も申請自体は続けられます。
ただし退職後に受給を継続するには、退職日の前日までに一定の被保険者期間があることなど別条件が加わるため、退職を決める前に加入先へ確認しておくと安心です。
雇用保険の傷病手当は、名前が似ている健康保険の傷病手当金とよく混同される制度です。
こちらは、失業手当の受給資格がある人が求職の申込みをしたあとに、病気やケガで15日以上続けて働けなくなった場合に、基本手当の代わりとして支給されるお金です。
つまり「退職後、求職活動中に体調を崩した」という状況で使う制度であり、在職中の休業を支える健康保険の傷病手当金とは対象になる時期が異なります。
受給するには失業の状態にあることが前提です。そのうえで病気やケガのために就労できない期間が15日以上続く場合に、失業認定日にあわせてハローワークへ申請します。
また、基本手当をすでに受け取っている期間と重ねて受給することはできず、どちらか一方が支給される仕組みです。
再就職手当は、失業手当(基本手当)の受給資格を得た人が、早期に安定した職業へ就いた場合に支給される「就職促進給付」のひとつです。
失業手当を受け取り続けるより早く再就職したほうが結果的にお得になるよう設計された制度で、退職後の生活費に不安がある人にとっては選択肢の一つになります。
主な受給条件は次のとおり。
出典:雇用保険受給資格者のみなさまへ 再就職手当の額|ハローワーク
早く動くほど受け取れる額が増える仕組みになっているため、退職前から「いつまでに転職先を決めたいか」を考えておくと制度を活かしやすくなります。
失業手当や傷病手当金は「もらえるお金」として注目されがちですが、受給の裏側には保険料の負担増や働き方の制約といった見落としがちな不利益もあります。
まず誤解しないでほしいのは、退職給付金を受け取ったことが保険料負担の原因になるわけではないという点です。
会社を辞めると健康保険の扱いが会社員のものから変わり、その結果として保険料負担が重くなるケースがあります。
つまり因果関係は「退職給付金の受給」ではなく「退職そのもの」にあります。
会社員のときは健康保険料を会社と折半していましたが、退職後は任意継続健康保険や国民健康保険に加入する必要があり、全額を自分で払うことになります。
任意継続を選ぶ場合、保険料は退職前に控除されていた額のおおむね2倍になる仕組みです。

国民健康保険を選んだ場合も前年の所得をもとに保険料が計算されるため、在職中と同じくらいの負担になる人も少なくありません。
失業手当の受給中は収入が減るのに保険料は高止まりしやすいという点は、退職前にシミュレーションしておくべきポイントです。
失業手当は「働ける状態にあるが仕事が見つからない人」を支える制度なので、受給中に一定額以上の収入を得ると給付額が減額されたり支給が止まったりします。
例えばアルバイトで生活費を補いたいと思っても、働いた時間や収入をハローワークに報告する義務があり、自由には動けません。
つまり「給付金をもらいながら自由に稼ぐ」というイメージとは違い、制度ごとに働き方への線引きがあります。
失業手当の給付額は退職前の給与の一定割合で計算されるため、在職中の収入をそのまま維持できるわけではありません。
傷病手当金も同様に、給与の満額ではなく一部が支給される仕組みです。生活費をまるごとカバーできるお金ではないという前提を押さえておく必要があります。
加えて、給付には待期期間や受給までの手続き期間があり、退職直後にすぐお金が入ってくるわけではありません。手元の貯蓄で数か月分の生活費をつなぐ計画も必要です。
失業手当と傷病手当金にはそれぞれ制度特有の不利益があります。どちらの制度が自分の状況に合っているか、比較しながら判断してみましょう。

自己都合退職の場合、失業手当は申請してすぐに受け取れるわけではありません。
給付制限期間として原則2ヵ月ほど無収入の状態が続きます。
この期間は生活費を貯金だけで乗り切る必要があり、退職前の資金計画が甘いと想像以上に苦しくなります。
また、受給を続けるには月に一定回数の求職活動実績をハローワークに報告する義務があります。
求職の申込みや失業認定の手続きは決まった曜日・時間に窓口へ出向く必要があり、平日日中に動けない人には負担になります。
出典:雇用保険の具体的な手続き|ハローワークインターネットサービス
さらに、受給期間中はアルバイトなど一定以上の収入を得る働き方が制限され、収入を補いたくても自由には動けません。
「本当に辞めるべきか」を判断する前に、この無収入期間を耐えられるかどうかを冷静に見積もることが大切です。
傷病手当金は病気やケガで働けない状態が前提の制度で、支給期間は通算で1年6ヵ月が上限と決まっています。
この期間を過ぎると、体調が回復していなくても給付は打ち切られます。
加えて、傷病手当金と失業手当は同時に受け取れません。傷病手当金は「働ける状態にない人」への給付、失業手当は「働く意思と能力がある人」への給付という前提が異なるためです。
つまり、療養しながら転職活動を並行して進めるのは制度上難しく、体調を優先すれば求職活動が後回しになり、その分だけ再就職までの時間が延びやすくなります。
体調不良が理由で退職を考えている場合、まずは治療を優先するのか、収入の心配から早く次の仕事を探すのか、優先順位をはっきりさせておかねばなりません。
「退職給付金 サポート」と検索すると、給付額を増やせると謳う業者の広告が目立ちます。
結論からいうと、失業手当や傷病手当金の申請代行は社会保険労務士の資格を持つ人しか行えません。
社労士法で定められた業務であり、無資格の業者が申請書類の作成や提出を代行する行為は違法になるおそれがあります。
出典:働き方改革推進支援助成金の申請に関する注意事項|厚生労働省京都労働局
つまり「退職給付金サポート」と名乗る業者の多くは、実際には申請書の書き方を教えるだけの相談業務にとどまります。(※実際に社労士事務所が代行をサポートしてくれるサービスもあります)
にもかかわらず、数万円から十数万円の高額な手数料を請求されるケースが報告されています。給付額そのものが増えるわけではないので、支払った手数料はそのまま手出しの持ち出しになる可能性が高いです。「給付額を増やせる」という宣伝文句には根拠がないと考えたほうが安全です。

失業手当も傷病手当金も、受給の条件や金額はハローワークや協会けんぽが定める基準で決まっており、業者を介したからといって増額される制度ではありません。
申請方法に不安があるなら、まずは管轄のハローワークや会社の担当窓口に相談するのが確実で、費用もかかりません。
ここまでの内容を踏まえて、まだ残っている疑問や不安を一つずつ解消していきましょう。
先述の通り、「退職給付金」という名前の公的制度は存在しません。実態は失業手当(雇用保険の基本手当)や傷病手当金、再就職手当などの総称として、サポート業者やまとめサイトが使っている呼び方です。
失業手当、傷病手当金それぞれ管轄も申請先も別物なので、「退職給付金」という一括りの制度に申し込む、という発想自体がそもそも誤りです。
もちろん、受給条件を満たせばそれぞれの手当をもらうことは可能です。
広告で見かける「200万円もらえる」という金額は、複数の制度を最大条件で組み合わせた場合の合計にすぎません。
たとえば失業手当を給付上限に近い金額で長期間受給し、さらに再就職手当や傷病手当金まで併せて計算すると、そのくらいの数字になることはあります。
ただし失業手当の給付額は退職前の給与や勤続年数、年齢によって上限が決まっていますし、傷病手当金は失業手当と同時にはもらえません。
誰にでも当てはまる金額ではなく、条件がそろった一部の人だけが到達しうる上限値と考えたほうが実情に近いです。
次の転職先がすでに決まっている人や、すぐに次の仕事に就く予定がある人は、失業手当の受給にこだわる必要はありません。
求職活動の実績報告など手続きの負担がかかるうえ、待期期間や給付制限の分だけ収入が途切れる期間が生まれてしまうからです。
また、フリーランスや個人事業主として独立するつもりの人も、失業手当の対象外になるケースが多く、無理に申請しても時間だけがかかってしまいます。
傷病手当金についても、退職後すぐに元気に働ける状態であれば対象にならないため、該当しない制度を追いかけて手続きに時間を使うより、自分の退職理由や今後の働き方を先に整理したほうが結果的に早く前へ進めるでしょう。
退職給付金がいくらもらえるかは、退職を決める材料のひとつにすぎません。
まずは今の会社を辞めるべきかどうか、何につらさを感じているのかを整理することから始めてみましょう。
給付金の額や「もう限界」という一時的な感情だけで退職を決めてしまうと、辞めたあとに後悔するケースも少なくありません。
今つらいと感じている原因は職場そのものなのか、業務内容なのか、それとも一時的な人間関係のトラブルなのかによって、取るべき行動は変わってきます。
退職以外にも、部署異動を相談する、休職して立て直すといった道が残っている場合もあるからです。
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そのうえで「転職したほうがよい」「まず誰かに相談したほうがよい」など、今の自分に合った次の一手が見えてくる仕組みです。
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退職給付金がいくらもらえるかを調べる前に、まずは自分が本当に退職すべきなのか、退職後に何をすべきなのかを整理してみてください。
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