中途採用で放置されるのは当たり前?中途で入社した人が放置されやすい実態はたしかにあります。ただ、「当たり前か否か」は採用条件や職種によって大きく変わります。後述しますが、即戦力として期待されていた場合と、ポテンシャル採用の場合とでは「放置」の意味合いが全く異なります。そのため、中途=放置が当たり前とは必ずしもいえません。中途採用で「放置された」「扱いがひどい」と感じる人の声「中途だから即戦力でしょ?」という周囲の思い込みが放置を生む、そんな実態がXでも多く報告されています。ある人事担当者がXに投稿した事例が目を引きます。担当者の職場では、中途入社した社員が3カ月で退職しました。その背景には、「メンターは名前だけで実際は放置」「質問すると『前の会社ではどうしてたの?』と返される」という状況があったといいます。新卒には手厚いオンボーディングをするのに、中途には「即戦力でしょ?」の一言で済ませていたと、その人事担当者は反省を込めて振り返っています。「中途ってこれが普通なんですかね、できて当たり前ってことですよね」——別のユーザーのこのつぶやきは、同じ疑問を抱える多くの人の気持ちを代弁しているようです。放置されて精神的に追い詰められたという声もあり、「病んだ」「会社に行きたくない」といった言葉も珍しくありません。https://twitter.com/jinjinouragawa/status/2038545774469059045https://twitter.com/kaedeminoru/status/2023721162669519132https://twitter.com/syafuuu__/status/2013818370580455784中途採用で入社した人が放置される原因放置されているのは、あなたの能力や適性とは関係なく、会社側の構造的な問題が、新入社員を孤立させる状況を生み出している可能性があります。即戦力として期待されすぎているケース即戦力採用では、会社が「前職の経験があるから説明しなくても動けるはず」という思い込みを持ちやすいです。その結果、業務説明や引き継ぎが省略され、入社初日から「とりあえずやってみて」と丸投げされる状況が生まれます。ただ実際には、会社ごとに使うツール、用語、暗黙のルールはまったく違います。前職で豊富な経験があっても、新しい職場のやり方は一から把握しなければなりません。採用する側と採用される側のあいだにある「自走できる」という認識のズレこそが、放置につながります。現場が忙しく教育体制がないケース慢性的な人手不足の職場では、既存メンバーが自分の業務だけで手いっぱいです。採用だけは進むのに、新入社員を教える余裕が物理的にない、という構図はよく目にします。厚生労働省の調査でも、人手不足事業所が増加傾向にあることが示されています。こうした職場では「仕事は見て覚えろ」という空気が根付いていることも多く、中途採用者が業務の全体像をつかめないまま月日だけが過ぎていくことになります。本人が「何を聞けばいいか」すら分からない状態で放置されるのは、職場環境そのものの問題です。出典:第2章 人手不足への対応|厚生労働省教育担当者が明確に決まっていないケースOJT(職場内訓練)の担当者が決まらないまま入社させる会社は珍しくありません。「誰かが教えるだろう」という曖昧な空気の中で、責任の所在がぼやけていきます。担当者が決まっていなければ、声をかけやすい人に都度聞くしかありません。でも全員が忙しければ、誰にも聞けずに一日が終わります。中小企業を対象とした調査でも、オンボーディング施策は「まだまだ不十分」と指摘されており、この責任の曖昧さが放置を常態化させ、中途採用者の早期退職につながっています。出典:中小企業における中途採用者のオンボーディング施策の現状と効果|商工総合研究所中途採用の放置を語るうえで外せない「即戦力採用」と「ポテンシャル採用」同じ「放置」でも、あなたがどちらの採用枠で入社したかによって、その意味合いはかなり変わります。即戦力採用なら放置もやむなし即戦力採用とは、入社初日から業務を回せる人材を求める採用です。会社は「一通りのことは自分でできる人」として迎えているため、手取り足取り教えるつもりがそもそもありません。ある程度独立して動くことを前提にしているぶん、「放置」ではなく「裁量を渡している」という解釈が会社側には成り立ちます。ただし、社内ルールやツールの使い方、チームの進め方といった会社固有の情報は、前職の経験があっても知るよしがありません。その部分の説明すらないなら、さすがに受け入れ態勢の不備といえます。ポテンシャル採用で放置は会社に問題ありの可能性ポテンシャル採用は、現時点のスキルより将来性を見込んだ採用です。会社は「今は未熟でも育てる」と承知のうえで採用しているはずです。にもかかわらず入社後に何も教えてもらえないなら、採用の前提と現場の対応が完全にずれています。これは本人の問題ではなく、育成体制を整えないまま採用だけ進めた会社側の構造的な問題です。オンボーディング(入社後の受け入れ・定着支援)の整備状況が定着率に直結するという調査結果もあるように、受け入れ態勢のない会社では短期離職が起きやすい傾向があります。出典:中途採用・経験者採用が活躍する企業における情報公表その他取組に関する調査研究|厚生労働省【ケース別】中途採用が放置されている状況と退職判断の目安「これは普通なのか、それとも異常なのか」——放置されているときは皆が感じることです。状況のパターンごとに、退職判断の目安をまとめました。転職3日目で自走を強いられる即戦力採用で入社した場合は、入社3日で「あとはお任せします」と言われることはあります。前章で触れたとおり、即戦力採用は自律を前提とした採用です。ただし、「自走」と「放置」は別物。PCのセットアップ手順すら教えてもらえない、社内ツールへのアクセス権も付与されていない、という状態は、自走以前の話です。入社3日以内に「誰に何を聞けばいいか」がまったくわからない状態は、受け入れ体制の失敗です。即戦力採用であっても、業務に必要な環境と最低限の情報は提供されるべきもの。1週間経っても改善されないなら、上司か人事に直接状況を伝えてみましょう。仕事がわからないのに仕事を教えてくれないポテンシャル採用で入社したにもかかわらず、誰も業務の進め方を教えてくれない——これは会社側の問題です。わからないことを聞いても「見て覚えて」で終わり、指示もないまま時間だけが過ぎる状況は、育成の放棄といえます。厚生労働省のパワーハラスメントの類型には「過少な要求」や「人間関係からの切り離し」が含まれており、仕事を教えない・無視するという行為がこれに該当するケースもあります。出典:パワハラ6類型|厚生労働省入社1カ月を超えてもこの状態が続くなら、改善を待つより転職を考えるのが現実的です。仕事が振られない・相手にされていない入社から半年経っても、まともな業務が振られずミーティングにも呼ばれない——これはかなり深刻な状況です。採用後に部署の事情が変わり、当初の役割がなくなってしまったケースや、会社が行動で「辞めてほしい」というサインを示しているケースもあります。半年放置が続いているなら、退職を選ぶのは十分に合理的な判断です。自分を責める必要はありません。組織に居場所がないまま時間を消耗するより、環境を変えることを優先してください。【体験談】転職先で放置されて退職を決断した人の実例ここで、中途入社で短期離職を経験した筆者の体験談を1つ紹介します。新卒で入社した会社を退職し、デジタルマーケティング全般を扱うコンサル会社へ転職しました。前職でも多少の経験はあったものの、正直なところ独学レベル。「ちゃんとしたスキルを身につけたい」という思いから、いわゆるプロフェッショナル集団へのジョインを決めました。選考では能力テストもありましたが、結果はポテンシャル採用。期待と不安を抱えながら入社初日を迎えます。ただ、ここで想定外の展開が待っていました。初日の午前中は総務からの説明だけ。規則や契約の話が終わると、午後にはいきなり現場へ放り出されます。「さすがに最低限のオンボーディングはあるだろう」と思っていた自分は、そこで軽く面食らいました。一応、教育係として新卒の社員がついてくれましたが、スタンスは完全に“聞かれたら答える”。こちらから質問しない限り、何も教えてはもらえません。さらに追い打ちをかけるように、初月からインバウンドマーケのノルマが課されます。しかもその担当は自分ひとり。社内でも前例がなく、いわばゼロからの立ち上げです。「この席には誰が座っていて、このツールを使っているから、あとはうまくやって」そんなざっくりとした説明だけを受けて、完全に丸投げ状態。自由にやっていいと言われても、そもそも何をどう進めればいいのか分かりません。結局、5分に1回は新卒の教育係に恐る恐る質問する日々。それでも定例のMTGでは、ノルマの進捗が悪いと容赦なく指摘されます。「自分ができないからだ」そう思い込んで無理に踏ん張った結果、18日目で出社できなくなりました。そのまま退職です。退職時に上司とZoomで話した際には、「フォロー体制が整っていなかった」と謝罪を受けました。ポテンシャル採用である以上、もう少しサポートがあってもよかったのでは、という思いは正直あります。ただ同時に、「分からない」「できない」ともっと早く、もっと強く伝えるべきだったとも感じています。環境の問題と、自分の立ち回り。どちらも噛み合わなかった結果の18日間でした。中途採用で「放置されたから退職」の選択肢はあり?放置された状況によっては、退職を考えるのもありです。ただし、辞める前に確認しておきたいことも少なくありません。放置された状況によってはあり退職を検討してよい状況として、次のようなケースが挙げられます。ポテンシャル採用なのに、入社から3か月以上たっても業務の説明がない相談しても「自分で考えて」と言われ続け、具体的な指示がない会議や打ち合わせから意図的に外されている同僚からも無視・孤立させられている特に下の2つは、厚生労働省が定めるパワーハラスメントの「人間関係からの切り離し」に該当する可能性があります。会社側に改善する気配がないなら、退職は合理的な判断です。退職を決める前にできることまず、直属の上司以外のルートで状況を伝えてみましょう。人事部や社内の相談窓口に「業務を割り当てられていない」と伝えるだけで、対応が動き出すことがあります。また、採用時に提示された労働条件と実態が大きくかけ離れている場合は、ハローワークに申請すると特定受給資格者に認定される可能性があります。会社都合退職と同等の失業給付が受けられる区分なので、辞める前に確認しておくと安心です。出典:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準|厚生労働省放置が原因で辞めた場合の退職理由は?面接で退職理由を聞かれたとき、「放置されていた」とそのまま伝えると会社批判に聞こえてしまいます。「入社後の業務環境が自分の成長イメージとあわず、より裁量を持って働ける環境を求めて転職を決めました」のように、自分が何を求めているかに軸を置いた言い方に変換しましょう。短期間での退職であっても、次の職場で何を実現したいかを具体的に語れると、面接官の不安を和らげやすくなります。 中途採用のミスマッチを避けるには、入社前の見極めが重要放置されるつらさを事前に防ぐ最善策は、入社前の段階で「OJTがあるか」「どこまでの自力対応を期待されているか」を確認しておくことです。面接や内定後の面談で遠慮せず聞くだけで、入社後のギャップはずいぶん小さくなります。短期離職になってしまった場合、次の転職活動でその理由を問われます。放置が限界なら退職の判断は合理的ですが、同じミスマッチを繰り返さないためにも、自分の「働き方のタイプやスタンス」を把握しておくことが大切です。Z-baseの働き方タイプ診断は、求職者だけでなく企業側も同じ診断に回答する仕組みになっているため、価値観や仕事スタイルが近い会社と出会いやすくなっています。また、今すぐ辞めるべきか迷っている場合は、キャリア診断サービス「キリカエテ」で自分の状況や気持ちを整理してみてください。辞めるか続けるかを決める前に、今の自分に何が起きているかを可視化できるので、冷静に何をすればよいか判断できますよ。