退職させてくれない行為が違法になる法律上の根拠退職を拒否されても、法律上は会社側に引き止める権限はありません。民法と労働基準法が、労働者の退職の自由を明確に保護しています。民法・労働基準法における退職の自由民法第627条第1項は、期間の定めのない雇用契約(正社員など)において、労働者はいつでも退職を申し入れることができると定めています。申告から2週間が経過すれば、会社の承諾がなくても契約は自動的に終了します。「会社が認めなければ辞められない」という認識は、法律上は誤りです。労働基準法第5条は、暴行・脅迫・監禁などの手段で労働者の意思に反して働かせることを「強制労働」として禁止しています。違反した場合の罰則は1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金と、労働基準法の中で最も重い水準です。出典:労働基準法(昭和22年法律第49号)|厚生労働省会社や上司による退職拒否が違法となるケース就業規則に「退職には会社の承認が必要」「3か月前までに申し出ること」といった条項があっても、民法627条の規定を超えて退職を制限することはできません。法律の最低基準を下回る就業規則の条項は無効です。退職の意思を伝えた際に「損害賠償を請求する」「懲戒処分にする」などと告げる行為は、退職の自由を侵害するパワーハラスメントに該当する可能性があります。実際に退職による損害賠償が認められるケースは極めて限られており、根拠のない脅しである場合がほとんどです。出典:途中で退職した場合には損害賠償請求されますか?|確かめよう労働条件・厚生労働省 退職を拒否された場合に労働基準監督署が対応できる範囲労働基準監督署(以下、労基署)は退職問題を何でも解決してくれる機関ではありません。できることとできないことを正確に把握しておくと、相談窓口を無駄なく選べます。労働基準法違反に対する是正指導の内容労基署が動けるのは、会社に労働基準法上の違反行為がある場合です。たとえば、「辞めたら給与を払わない」と脅して働かせ続ける行為は、労働基準法第5条が定める強制労働の禁止に触れます。退職を妨げる目的で暴行・脅迫が使われた場合も同条の対象となり、1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金という重い罰則が設けられています。出典:労働基準法 | e-Gov 法令検索違反が認められると、労基署の監督官が事業所へ立ち入り調査を行い、是正勧告書を交付します。是正勧告は行政指導であり法的拘束力はありませんが、勧告後も改善されない場合は書類送検に進む可能性があります。会社側にとって書類送検は社会的信用の毀損につながるため、勧告を受けた段階で対応を改める会社がほとんどです。未払い賃金・残業代の不払いが同時に発生している場合も、労基署が是正指導を行う対象になります。出典:労働基準監督署の是正勧告について退職交渉への不介入など労基署が扱えない領域一方、労基署が対応できない領域も明確に存在します。「会社が退職を認めてくれない」という状況そのものは民事上の問題であり、民事不介入の原則から労基署は当事者間の交渉に介入できません。退職の意思表示を代行したり、会社に「退職を認めるよう」直接命令したりする権限は持っていないのです。同様に、パワハラによる精神的損害の賠償請求・慰謝料交渉・有給休暇の強制取得なども、労基署の管轄外です。これらは労働局の「個別労働紛争解決制度」や労働審判、民事訴訟といった別の手続きで扱われます。退職を拒まれている状況では、労基署への相談と並行して、こうした民事的な手段も視野に入れておくことが解決への近道となります。出典:個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん) | 厚生労働省 労働基準監督署に退職トラブルを相談する手順相談前の準備を整えておくと、当日の説明がスムーズになり、相談員から具体的な対応策を引き出しやすくなります。証拠収集から窓口利用、制度申請まで、順番に確認しましょう。1)証拠書類を用意する相談員が状況を正確に把握するには、口頭説明だけでなく客観的な記録が必要です。手元にある資料を事前にまとめておきましょう。持参すると有効なものは、就業規則や雇用契約書(退職に関する規定が載っているページ)、退職を申し出た日付が確認できるメール・チャット履歴、上司からの引き止めや脅しのやり取りの記録です。録音については、会話の当事者自身が行う場合は違法になりません。未払い残業代など関連トラブルがある場合は、タイムカードや給与明細も合わせて持参してください。2)総合労働相談コーナーに行く総合労働相談コーナーは、全国の都道府県労働局や労働基準監督署内など378か所に設置されています。予約不要・無料で利用でき、専門の相談員が対応します。出典:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省窓口では「退職を申し出た日付」「会社側の対応」「現在の状況」を時系列で説明します。「退職の意思を示したにもかかわらず会社が受理しない」と明確に伝えると、相談員が問題の所在を把握しやすくなります。内容によっては、会社への指導につなげてもらえます。3)助言・指導またはあっせんを申請する窓口相談後も会社の態度が変わらない場合、都道府県労働局の「助言・指導」や「あっせん」制度を利用できます。助言・指導は労働局が会社に自主的な解決を促す手続き、あっせんは第三者が双方の間に入って合意を引き出す調整手続きです。どちらも無料で申請できます。出典:個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)|厚生労働省申請は総合労働相談コーナーで受け付けています。相談の際に「制度を利用したい」と伝えるだけで手続きに進めます。相談から制度申請まで同じ窓口で完結するため、初めての方でも流れに沿って進められます。 【口コミ】退職させてくれず労働基準監督署に駆け込んだ人の声実際に相談した人の体験を、良かった例と悪かった例に分けて紹介します。相談内容や担当者によって結果は異なるため、両面を把握しておくことが大切です。良かった口コミXではこんな声も見られます。「最寄りの労働基準監督署に電話相談した事実を会社側に伝えたら、手のひらを返したように態度が変わり希望日に退職できた」という体験です。相談したという事実を会社に伝えるだけで、引き止めが止まることがあります。また、相談後に労基署が指導に動き、未払いの退職金を受け取れたという声や、「敷居が高いと思っていたが職員がとても親身だった」という投稿も複数見られます。担当者に恵まれたケースでは、状況が大きく動く可能性があります。https://x.com/EN_mbbook/status/1506471787126681603https://x.com/axe_fran/status/1886370735574462586https://x.com/63e4fPieb6UalhI/status/1933650539390341201https://x.com/BVnUIagQ8dKlUk8/status/1932606261843132841悪かった口コミ一方で、「相談したが『言っても無駄』と言われた」「相手にされなかった」という声もXに多く見られます。退職交渉そのものは労基署の管轄外のため、民事的なトラブルは都道府県労働局のあっせん制度を案内されるにとどまるケースもあります。また、公務員には労働基準法が適用されないため、相談自体を断られることもあります。「都道府県の労働局に行ったら会社へ電話してもらえて無事退職できた」という声もあり、窓口を使い分ける視点が重要です。https://twitter.com/mnoko32/status/2022151264541585759https://twitter.com/ryo0927/status/1991198110169854032https://twitter.com/satellites_1646/status/1954521511416725539https://twitter.com/hana_22_h/status/1982053899529048070退職させてくれない場合に利用できる相談窓口の比較労基署だけが相談先ではありません。状況によって適切な窓口は異なるため、それぞれの役割を理解したうえで選ぶことが大切です。ハローワークや労働局など公的相談窓口ハローワークの主な役割は求職者支援(職業紹介・失業給付)であり、退職トラブルの解決を直接担う機関ではありません。「退職できない」という相談をしても、適切な窓口へ案内されるにとどまります。退職交渉が行き詰まった段階で頼りになるのが、都道府県労働局の総合労働相談コーナーです。ここでは無料で相談を受け付け、必要に応じて助言・指導やあっせん(紛争調整委員会による仲介)につなげてくれます。あっせんは双方が合意すれば解決できる制度ですが、会社が参加を拒否した場合は手続きが終了します。強制力がない点は理解しておきましょう。出典:個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)|厚生労働省弁護士や退職代行サービス会社から損害賠償請求をほのめかされている場合、公的機関では対応しきれません。こうした状況では弁護士に依頼するのが確実です。弁護士であれば交渉の代理から訴訟対応まで一括して担えます。即日退職が必要な場合は退職代行サービスが選択肢に入りますが、業者の種類に注意が必要です。一般業者は本人への連絡の取り次ぎしか行えず、会社との交渉は弁護士法第72条(非弁活動の禁止)に抵触する可能性があります。交渉が必要になりそうな場面では、弁護士法人が運営する退職代行か、弁護士本人に依頼してください。出典:弁護士にしかできない行為も|兵庫県弁護士会まず「会社が法律違反をしているか」「交渉の余地があるか」という2点で状況を整理し、それに合った窓口を選ぶのが最短経路です。民間サービスも活用してスムーズな退職を目指そう退職させてくれないトラブルでは、労働基準監督署だけで解決できる範囲に限界があります。状況に応じて民間サービスを組み合わせることが、最短で退職を実現する近道です。退職代行サービスを選ぶときは、運営主体の確認が欠かせません。一般業者は会社への意思伝達のみ対応でき、交渉行為を行うと弁護士法第72条が定める非弁行為に該当する可能性があります。未払い賃金の回収や会社との条件交渉まで依頼したい場合は、弁護士または労働組合が運営するサービスを選ぶことで、トラブルなく手続きを進められます。退職問題が解決したあとは、転職先選びを慎重に進めることが大切です。今の職場で起きたトラブルの原因を振り返ると、自分に合う職場環境や働き方が見えてきます。次の職場でも同じ状況を繰り返さないよう、労働条件の確認と自分の希望の整理を転職活動の出発点にしてください。