希望を持って転職したのに、試用期間ですでに転職先が合わないと感じている人もいるでしょう。
そうなったら「入社して1カ月で辞めることはできるのだろうか」「試用期間中に辞めるとどうなるか」など不安に感じることもでてくるはず。
この記事では、試用期間に辞めたい方向けに、試用期間に辞めることによるリスクや退職事情について解説します。
試用期間中に辞める人は多い?
そもそも試用期間とは、企業が、採用した新入社員と実際に働いてみてうまくマッチングするかを吟味する期間といえます。
試用期間の長さは法律で定められているわけではありませんが、一般的には3カ月〜6カ月、長いところだと1年を設けている企業もあります。
実際のところ、試用期間中に辞める人は少なくありません。
アルバリンク社が実施した、入社から1年以内に会社を辞めた人対象の調査によると、6カ月未満で退職している人は68.5%となっています。
また、3カ月以内に退職している人は36.9%おり、1年以内に辞める人の3~7割は、試用期間中に退職していると推測できます。
入社後7カ月~12カ月で退職する人の割合よりも大きいので、1年以内に辞める場合、試用期間中に見切りをつける傾向が強いようです。
出典:【入社1年以内に会社を辞めた理由ランキング】男女333人アンケート調査 | 訳あり物件買取プロ
試用期間中に辞めるとどうなる?
試用期間中に辞めると、良くない影響がありそうで不安ですよね。
懸念されるのは、主に以下の3つです。
- 退職を申し出た日から気まずくなる
- 失業保険の受給対象外になる
- 転職活動に影響が出る
それぞれ説明します。
退職を申し出た日から気まずくなる
1つ目は、退職を申し出た日から気まずくなることです。これは、早期離職でない場合にも言えることですが、「入社からすぐ」ということで、より気まずさが増す可能性は高いです。
研修を受けていたり、面倒見のいい上司から仕事を教わっている時期だったりするとなおさらです。
しかし、気まずいという理由で試用期間の退職を渋る必要はありません。
なぜなら、先述したように試用期間は企業側が採用した人間とマッチするか確かめる期間でもあるからです。
企業側も試用期間中に退職してくれた方が、人件費や研修費のコストを下げられて新しい人材を探せます。
ある意味企業側にもメリットがあるので、過剰に気まずさを感じなくてよいでしょう。
失業保険の受給対象外になる可能性もある
失業保険の受給条件には、雇用保険の加入があります。
雇用保険は、週所定労働時間が20時間以上31日以上の雇用なら試用期間中でも加入しなければなりません。
しかし試用期間中に退職した場合、失業保険の受給対象外になるケースもあります。
具体的には、2年間で短期離職を繰り返して雇用期間が12か月を超えていない場合が該当します。
自己都合退職の場合、離職日以前の2年間で雇用保険の被保険者期間が、通算して12カ月以上でなければ、失業保険の対象者になりません。
したがって、超短期間で退職している場合は失業保険の受給対象にならない可能性もでてくるでしょう。
また解雇などの会社都合の事由による場合は、離職の日以前の1年間で被保険者期間が通算で6カ月以上の条件を満たす必要があります。
転職活動に影響がでる
試用期間、いわば短期での退職は次の転職活動に影響を及ぼすことがあります。
一般的に、企業側には「会社に利益をもたらす人材になるには時間がかかる」という考えから、長く働ける人材を採用したがる傾向があります。
「入社したら3年は働くべき」という言葉もありますが、業務を覚えて自走し、後輩に教えられるまでには、3年はかかるという一般的な認識が存在しているからです。
そのため、試用期間での退職履歴があると、「またすぐに辞めるのでは?」と感じる採用担当者が一定数いることも否めません。
試用期間で退職した場合は、必ずと言ってよいほど退職理由を問われます。
あらかじめ回答方針を準備しておき、前向きな退職であったと印象付けることがポイントです。
試用期間中に辞める人によくある理由
試用期間中に辞める人によくある理由はさまざまですが、主に多いのは以下の3つです。
- 会社とさまざまな点が合わない
- 能力不足を感じた
- 体調不良を起こした
それぞれ説明します。
会社とさまざまな点が合わない
まずはあらゆる点で、「この会社とは合わない」と早期に感じてしまうことが挙げられます。
具体的には仕事の内容や社風、人間関係などです。
仕事の内容が合わないと感じるのは、希望した業務と異なる内容を任されたときです。
例えば、希望だった営業の部署に配属されたとしましょう。
入社前は法人向けの提案営業を希望しており、担当者からもそのような仕事をすると伝えられていたのにもかかわらず、新規開拓の飛び込み営業を任された場合、「違う」と感じるではずです。
事前に、飛び込みの仕事をすることがわかっていれば、内定を承諾しなかったかもしれません。
また、社風が体育会系だった、上司と良好な関係を築けないなど、実際に働いてみないとわからないこともあるでしょう。
能力不足を感じた
実際に入ってみて、周りの社員と自分の能力の差をまざまざと感じさせられるケースもあります。
よくあるのが、「ポテンシャル採用」と聞いていたのに、入社したら「即戦力」として扱われるケース。
業務に必要なスキルが身に付いていない状態で、実務を任されると負担に感じるでしょう。
例えばエンジニアならプログラミング、外資系の社員なら英語です。
入社前に能力テストを実施する企業もありますが、なかにはスキルが足りなくても将来性を見込んで採用する企業もあります。
実際、IT業界は人手不足が顕著なため、中小企業ではスキルよりも人間性を重視する企業も多いです。
ただし、業務量が多い職場では試用期間の社員をサポートできず、新入社員からすればスキルが向上しない、成長を感じない日々が続いていきます。
また先輩社員から「ほかの社員が試用期間のときはもっとできた」「同期と比べると成長が遅い」などの発言があると、モチベーションも低下するでしょう。
このように仕事ができない自分に嫌気がさし、能力不足と感じて退職にいたるケースがあります。
体調不良を起こした
3つ目の理由は、体調不良です。
体調不良には、身体的不調と精神的不調があります。
身体的不調の例としては、長時間にわたる荷物運びや立ち仕事で慢性的な腰痛を発症してしまった、持病が悪化して仕事を継続するのが難しくなったなどが挙げられます。
身体的不調は比較的症状がわかりやすく、辞める決断も早期にできるでしょう。
一方で問題なのは精神的不調です。
職場環境が合わず、適応障害やうつ病を発症するのが代表的な例でしょう。
特に責任感が強い人や真面目な人は、仕事ができないと自分を責めたり、「仕事に行きたくないのは、甘えだ」と考えたりしがちです。身体的不調と異なり、心の病を患ってしまうと回復するまでに長い時間を要します。
新しい環境に身を置くだけでも、大きなストレスがかかります。少しでも「無理かも」と感じたら、遠慮せずに本音を打ち明けることが大切です。
【条件別】試用期間中の退職事情
試用期間中に退職する場合、新卒か中途か、公務員かそうでないかなどによって違いはあるのでしょうか。
雇用形態による違いはある?
正社員が試用期間中に退職する場合は、通常の雇用契約と同じように退職の手続きを踏む必要があります。労働基準法では、退職を希望する場合、少なくとも2週間前に退職の意思を伝えることが求められており、試用期間中であっても、この規則は適用されます。
一方でパートやアルバイトの場合も、退職の際には事前の通知が必要ですが、正社員と比較して手続きが簡略化されることが多いです。企業によっては1週間前の通知で十分とされることもあります。
ただし、契約書や就業規則に具体的な取り決めがある場合は、それに従う必要があります。パートやアルバイトも労働基準法の適用を受けるため、適切な手続きを踏むことが重要です。
業種による違いはある?
試用期間中の退職における手続きや影響は、業種によって大きく異なる場合があります。
例えば、公務員の場合は一般企業とは異なり、法的手続きが厳格です。公務員試用期間中に退職する場合は、上司の承認や正式な退職届の提出が求められます。
公務員は公共の利益に直接関与するため、突然の退職は業務に大きな影響を及ぼす可能性があります。したがって、適切な引き継ぎや事前通知が特に重要視されます。
ほかにも、介護士や看護師などの場合は、ほかの業種に比べて退職が難しい場合があります。これらの職種は、直接的に人命や生活に関わるため、退職による影響が大きいためです。
また、介護士や看護師が退職する場合、事前に十分な引き継ぎやスタッフ補充の計画が求められます。加えて、専門知識が必要な職種のため、突然の退職はほかのスタッフに過度な負担をかけるリスクがあるでしょう。
一方で製造業やサービス業では、業務の標準化が進んでおり、引き継ぎも比較的容易なため、試用期間中でも退職しやすいなどの傾向があります。
新卒か中途かによる違いはある?
新卒が試用期間中に退職する場合、転職市場では「第二新卒」として扱われます。
第二新卒は、新卒採用とは異なり、一定のビジネスマナーや社会経験が期待されますが、再び新卒としてのフレッシュなポテンシャルも評価されます。
とはいえ、勤め先の企業によっては新卒としての育成コストを回収できずに終わるため、退職には慎重になるべきといえるでしょう。
一方、中途採用者が試用期間中に退職する場合、転職市場での評価は個々のキャリアやスキルセットに依存します。中途退職者は即戦力としての期待が高いため、試用期間中の退職はマイナス評価されることがあります。
特に専門職や技術職の場合、即戦力としての期待を裏切る形になるため、次の職場選びには注意が必要です。しかし、適切な理由があれば転職市場での理解も得られる場合があります。
このように、新卒と中途採用者では、試用期間中の退職がその後のキャリアに与える影響が異なります。新卒の場合は「第二新卒」として再チャレンジできる一方、中途採用者は即戦力としての評価が重要です。
いずれの場合も、次のステップに向けてしっかりと準備をすることが大切です。

【FAQ】試用期間中の退職に関するよくある質問
ここでは、試用期間中の退職に関する疑問について回答します。
試用期間中に即日退職することは可能?
原則、試用期間中の即日退社はできません。
法律上、退職できるのは意思を伝えてから最短で2週間後とされているからです。
ただし、民法628条では、やむを得ない事情があれば2週間よりも前に退職することも可能としています。例えば、病気や怪我、家族の介護などがこれにあたります。
退職に関しては就業規則で「1カ月前までに申し出る」と決められている会社もありますが、法的な拘束力はありません。
参考:民法(やむを得ない事由による雇用の解除)|e-Gov法令検索
退職するまでの期間によってなにか変わる?
退職するまでの期間によって変わるのは、引き継ぎの有無と退職できる日程です。
例えば入社から1週間で辞める場合は、まだ入社したばかりの社員に業務を教えている頃でしょう。この頃であれば、特に引き継ぐ業務も発生しないため、2週間後に退職できる可能性が高くなります。
一方で入社から3カ月ほど経つと、ある程度業務の具合がわかってきて自走を始めている時期かもしれません。仮に退職を申し出たとすれば、同僚への業務の引き継ぎが必要になってくる可能性もあります。
退職の意思を伝えてからできるだけ早く辞めたい場合は、勤め先へ与えるインパクトが小さいタイミング、つまりは早期に申し出るのがよいでしょう。
試用期間中に辞める場合も退職届は必要?
試用期間中に辞める場合も退職届が必要です。
退職届の様式が会社にあれば指示にしたがって作成し、なければインターネットで探し、自身で作成するのが一般的です。
また、試用期間中の退職は、ほとんどの場合が自己都合での退職です。その場合は、退職理由の箇所には「一身上の都合により」と記載します。
辞めるなら試用期間後のほうがよい?
試用期間中と試用期間後では、退職のタイミングとしてそれぞれにメリットとデメリットがあります。
試用期間中に退職すれば、自分に合わない仕事や職場環境を早期に見極めることができ、感じなくてよいストレスや無駄な時間から開放されます。
しかし、超短期での退職は転職活動での説明が難しくなったり、スキルや経験をほぼ得られず退職することになるので、試用期間満了まで働いていたら得られた経験も捨てたりすることになるでしょう。
一方で、試用期間直後に退職した場合は、最低でも3カ月~6カ月の業務経験を得たことにはなります。そのため、その職務に関するスキルや経験を多少なりとも獲得できる点がメリットです。また、試用期間を全うすることで、自分の決断に対する納得感が増し、次のステップに進みやすくなる点もプラスといえます。
しかし、「辛い」と感じてから試用期間が終わるまで耐えなくてはいけないのは心理的負担になります。さらに、転職には運と縁の要素が重要であり、あえて試用期間後まで退職しなかったことにより絶好のタイミングを逃すこともあるでしょう。
いずれにせよ、辞めるタイミングは、自身の状況に合わせて考える必要があります。
給料はどうなる?
入社して1日でも出勤すれば、給料は振り込まれます。
試用期間でも雇用経書を通して雇用契約を結んでいるため、企業は給料を支払う義務があります。
もし試用期間中に給与が振り込まれなかった場合、企業側は労働基準法第24条の賃金全額払いの原則に違反します。
ほとんどないとは思いますが、もし試用期間中に退職したことで給料が振り込まれないというようなことがあれば、会社の所在地である所管の労働基準監督署に相談することをおすすめします。
参考:労働基準法第24条(賃金の支払)について|厚生労働省
試用期間中の退職にはメリットもある?
試用期間中の退職はマイナスなイメージが強いですが、メリットもあります。
それは体調が良い状態で転職活動ができて、自分に合った仕事を見つけられる可能性が高まることです。
合わない仕事や職場で働き続けても、理想のキャリア形成がある場合は自身の成長が遅くなる一方です。
また、職場環境が合わなければ、うつ病や適応障害などのメンタル疾患になることもあり、発症すれば社会復帰にはさらに多くの時間がかかるでしょう。
短期での退職は、転職活動で不利になる不安もわかりますが、「1日でも早く自分に合った仕事をするため」と考えれば、将来的に試用期間の退職が英断だったと思えるはずです。
正社員としての本採用が決定する前に、「辞めるなら試用期間」と割り切って退職するのもタイミングとして悪くないでしょう。
試用期間で辞めても転職は可能◎
入社前に「良い」と思った企業でも実際に働いてみないとわからないこともあります。
どうしても自分に合わないと感じた場合は、時間を無駄にしないためにも試用期間中に辞めるのもよいでしょう。
とはいえ退職したあとの転職活動で、試用期間中の短期離職が不利になってしまうことがあるかもしれません。
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また、一般的な転職市場では「早期離職=リスク人材」というイメージが浸透していますが、Zerobaseの掲載企業には、早期離職はマッチングミスなだけ、優秀な人材も必ずいるという認識があります。
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