診療放射線技師として病院で4年間勤務してきた坂井さん。
現場の閉塞感から「外側から医療を支えたい」と人材業界へ飛び込みましたが、入社後に待っていたのは、聞いていた新規事業の凍結とテレアポに追われる日々でした。
わずか1ヶ月での離職という挫折を経験し、一度は現場の技師に戻った坂井さんですが、現在は再び民間企業で「やりたかった仕事」に携わっています。
短期離職という選択のリスクと、その後のキャリアで掴んだ納得感について、リアルな軌跡を伺いました。
Zターン編集部坂井さん、本日はご参加いただきありがとうございます!よろしくお願いします。
Zターン編集部余談なのですが、坂井さんは32歳ということで、私と同い年、同級生ですね(笑)。今日はリラックスしてお話しいただければと思います。
坂井あ、そうなんですね!よろしくお願いします(笑)。
Zターン編集部さっそくですが、坂井さんはもともと放射線技師として病院で働かれていたんですよね。なぜ民間の人材企業へ転職しようと思われたのですか?
坂井総合病院で4年ほど働き、一通り技師としての仕事は経験してやりがいも感じていました。ただ、病院だと最終的な決定権は常に医師にあります。もっとこうすべきだという意見があっても、技師の立場からは変えられないことが多くて。
Zターン編集部現場ならではの、もどかしさがあったのですね。
坂井はい。「中にいたら何も変えられない」と感じて、外側から違うアプローチで医療を支えたいと思ったのが転職のきっかけです。在籍中から活動して、ほぼ内定をもらった状態で退職し、1ヶ月ほど自分の時間を設けてから入社しました。
Zターン編集部入社されたのは、薬剤師向けの人材エージェントだったそうですが、どのような役割を期待されていたのでしょうか。
坂井医療従事者の相談窓口という新規事業を立ち上げる話でした。すでに薬剤師や看護師が在籍していて、他の職種も欲しいということで、技師である私が採用されたんです。「すぐにやります」という話だったので、すごく期待していました。
Zターン編集部期待に胸を膨らませての入社だったんですね。実際に働いてみて、最初に違和感を感じたのはいつ頃でしたか?
坂井本当にすぐです。ホームページではしっかりした規模に見えたのですが、行ってみたら社員は5人ほど。何より、新規事業の話が完全にペンディング(未定)になっていたんです。
Zターン編集部え、最初から話が違ったんですか……。
坂井「いつからやるんですか?」と聞いても「目処は立っていない」と。しかも入ってみたら看護師もいなくて、薬剤師も辞めると言っている状況。実態は既存のエージェント業しかやっていませんでした。
Zターン編集部本来やりたかった相談業務ではなく、エージェントとしての営業がメインになったわけですね。
坂井はい。毎日ひたすらテレアポです。病院薬剤師ならまだ分かりますが、企業や研究系の製薬会社など、全く分野が違うところに電話をかけろと言われても、仕事内容の説明すらまともにできませんでした。
Zターン編集部技師として患者さんと直接接してきた坂井さんにとって、その環境は辛かったのではないですか?
坂井そうですね。電話だけで表情も見えない状態でやり取りをするのが、自分には違和感というか、やりづらさを感じていました。技師を離れすぎるのも怖くなり、入社1ヶ月で「もう辞めよう」と決意しました。
Zターン編集部1ヶ月での退職となると、会社側の反応も厳しかったのでは……。
坂井かなり色々言われました。でも自分の決意は固かったので、2週間で退職させてもらいました。その後すぐにクリニックへの転職を決め、5ヶ月ほど働きましたが、そこでも立て続けに上手くいかないことがあって、少し精神的にきてしまった時期もありましたね。
Zターン編集部その後、別のクリニックで3年勤め、現在は再び民間企業で活躍されているんですよね。
坂井はい。今は病院の支援事業を担当していて、自分がやりたいことにドンピシャで携われています。技師を離れようと思った当初の目的が、ようやく今の会社で果たせている感覚です。
Zターン編集部紆余曲折を経て、納得のいく場所に辿り着かれたのですね!では、まさに今、短期で辞めようと考えている人たちにアドバイスをいただけますか?
坂井自分の経験から言えば、衝動的に辞めるのはリスクが高いなと思います。「あの時続けていれば違う自分がいたかも」と後悔した時期もありました。
Zターン編集部「一度立ち止まる」ことも大切だということですね。
坂井はい。それでも辞めると決めた選択が間違いだとは思いませんが、少し続けてみることで得られる価値も確かにある。将来の自分の価値を考えて、一度冷静に選択肢を残しておくのもいいんじゃないかなと思います。
Zターン編集部自身の挫折を乗り越えたからこその、重みのある言葉です。坂井さん、ありがとうございました!
特に新規事業を理由とした採用では、事業の進捗確認を怠ると、坂井さんのように望まないテレアポ業務に忙殺されるリスクがあります。
一方で、1ヶ月という短期離職を経験しながらも、その後再び技師として足場を固め、現在は理想の仕事に就いている点は非常に示唆に富んでいます。
短期離職はキャリアにおける大きな回り道かもしれませんが、その経験があったからこそ「本当にやりたいこと」への慎重さと情熱が磨かれたとも言えます。安易な離職を戒めつつも、自分の軸を諦めない大切さを教えてくれるインタビューでした。